東京国際映画祭

東京国際映画祭の歴代の受賞作品

日本最大の映画フェスティバル「東京国際映画祭」(TIFF)の歴代の受賞作です。予告編(トレイラー)の動画(Youtube)付き。最高賞である「グランプリ」「観客賞」(作品賞)をリスト(一覧表)にまとめました。2022年と過去の作品です。 毎年10月下旬ごろ東京で開催されます。(キネヨコ編集部)

2020年代2010年代2000年代1990年代1980年代歴史

2020年代のグランプリ・観客賞
部門 作品名 内容
2023
(第36回)
グランプリ 「雪豹」
(ゆきひょう)


(中国)

予告編→

雪豹
ペマ・ツェテン監督。

観客賞 「正欲」
(せいよく)


岸善幸監督

(日本)

予告編→

正欲
岸善幸監督。稲垣吾郎、新垣結衣主演。

監督賞
2022
(第35回)
グランプリ 「理想郷」

(スペイン、フランス)

2023年11月3日公開

予告編→

理想郷
スペインのロドリゴ・ソロゴジェン監督(41歳)。「ゴッド・セイブ・アス マドリード連続老女強姦殺人事件」(2016年)でゴヤ賞監督賞にノミネートされるなど、世界的に注目される若手。

スペイン、ガリシア地方の人里離れた山間の村を舞台に、移住して農耕生活を始めたフランス人の中年夫婦が直面する、地元の有力者の一家との軋轢をパワフルな演出で描いた重厚な心理スリラー。
観客賞 「窓辺にて」

(日本)

予告編→

窓辺にて
今泉力哉監督。稲垣吾郎主演

「愛がなんだ」「街の上で」など数々の現代ドラマの傑作を生んだ今泉監督による秀作。今泉氏の脚本力が存分に発揮された会話劇になっている。稲垣吾郎らの演技も称賛された。
2021
(第34回)
グランプリ 「ヴェラは海の夢を見る」

(コソボ)

予告編→

ヴェラは海の夢を見る
男性中心の世の中に対峙する女性を描く。主人公は、夫の死によって突如として不条理な現実に晒されることになる。そんな彼女の抵抗と挑戦の物語。

東欧コソボのカルトリナ・クラスニチ監督。本作が、長編映画のデビュー作となった。
観客賞 「ちょっと思い出しただけ」

(日本)

予告編→

ちょっと思い出しただけ
松居大悟監督(36歳)。 主演は池松壮亮(31歳)と伊藤沙莉(さいり)(27歳)。

男性ダンサー女性タクシー運転手の恋愛物語。

脚本は、松居監督のオリジナル。 ロック音楽家・尾崎世界観が作曲した「ナイトオンザプラネット」に触発され、シナリオを書いたという。

松居監督は、「ワンダフルワールドエンド」(2015年)などで知られる。 TAMA映画賞の新進監督賞を受賞したことがある。

松居監督の作品一覧(Wiki)→
2020
(第33回)
グランプリ コロナウイルス感染拡大のため選考なし
観客賞 「私をくいとめて」

日本

予告編→

Amazon→

私をくいとめて
大九明子(おおく・あきこ)監督。

2000年12月18日全国公開。芥川賞作家・綿矢(わたや)りさの小説を映画化した。31歳の一人暮らしの女性が主人公。

大九監督は横浜市出身。明治大卒業後、官庁外郭団体に就職するも4カ月で退職。お笑い芸人、女優などを経て、映画学校に入学。1999年に卒業後、映画製作の道に入った。

初の長編作品は「恋するマドリ」(2007年、新垣結衣主演)。初めて一人暮らしを始めた美術大生の少女が、引っ越しを通じて出会った男女と親交を深めていく物語。

2017年の「勝手にふるえてろ」(松岡茉優主演)では、東京国際映画祭観客賞を受賞した。今回で観客賞は2度目となる。

2020年代2010年代2000年代1990年代1980年代歴史

2010年代のグランプリ
作品名 内容
2019
(第32回)
わたしの叔父さん

デンマーク

予告編→
フラレ・ピーダセン監督。

人間ドラマ。落ち着いた作風。じんわりと心にしみる。美しい感動もの。少ない音や会話の中で描く映像美や繊細なドラマ性が評価された。

デンマークの農村を舞台に、体の不自由な叔父と、その世話をする姪っ子の関係を描く。 主人公となる姪っ子は、幼少期に両親と兄弟を失った。このため、叔父と実の親子のように暮らしていた。 彼女の仕事は酪農家。動物がとても好きで、獣医になりたいという夢があった。 この夢と、おじさんの面倒をみていきたいという葛藤に揺れる。
2018
(第31回)
アマンダと僕

フランス

予告編→

字幕版(Amazon)→
パリに出てきた直後に姉の死に見舞われた青年と、親を失った姪(めい)のアマンダが悲劇を乗り越えようとする様を描いた再生の物語。ミカエル・アース監督。
2017
(第30回)
グレイン
(Bugday)

トルコ、ドイツ、フランス、スウェーデン、カタール

授賞式→

予告編(字幕なし)→
白黒のSF映画。近未来を描いた。「蜂蜜」でベルリン国際映画祭の作品賞(金熊賞)を受賞したトルコのセミフ・カプランオール監督が5年をかけて製作した。
2016
(第29回)
ブルーム・オブ・イエスタディ
(The Bloom of Yesterday)

ドイツ、オーストリア

予告編→
ナチスを祖父に持つ男とフランス系ユダヤ人女性が恋に落ちるドラマ。日本では2017年9月30日に劇場公開。
2015
(第28回)
ニーゼと光のアトリエ
(Nise - The Heart of Madness)

ブラジル

予告編→
1940年代のブラジルに実在した女性医師ニーゼ・ダ・シルヴェイラをモデルにした感動の人間ドラマ。
2014
(第27回)
神様なんかくそくらえ
(Heaven Knows What)

アメリカ、フランス

予告編→
ニューヨークの薬物中毒の若者を描いた。ジョシュア&ベニー・サフディ兄弟監督。
2013
(第26回)
ウィ・アー・ザ・ベスト!
(We Are the Best!)

スウェーデン

予告編(日本語字幕なし)→
1980年代初頭のスウェーデンを舞台にした青春ドラマ。
2012
(第25回)
もうひとりの息子
(Le fils de l'autre)

フランス

予告編→
出生時に取り違えらえた2人の息子の運命を描く感動の名作。
2011
(第24回)
最強のふたり
(Intouchables)

フランス

予告編→
体の不自由な富豪と、その介護人の若者との交流をコミカルに描いたドラマ。
2010
(第23回)
僕の心の奥の文法
(Intimate Grammar)

イスラエル

予告編(日本語字幕なし)→
数年前から成長することをやめた少年アーロン、コミカルな要素も加えながら、思春期の心の揺れを寓話的に描く。

2020年代2010年代2000年代1990年代1980年代歴史

2000年代のグランプリ
作品名 内容
2009
(第22回)
イースタン・プレイ
(Eastern Plays)

ブルガリア

予告編(日本語字幕なし)→
漫然と日々を過ごす元アルコール依存症の芸術家。その心がゆっくりと復活する様を鮮やかに描く。
2008
(第21回)
トルパン
(TULPAN)

ドイツ、スイス、カザフスタン、ロシア、ポーランド

予告編(日本語字幕なし)→
カザフスタンの大地を舞台に、厳しい自然と共存しながら、一人前の羊飼いになろうと奮闘する青年の日々を見つめた本作。
2007
(第20回)
迷子の警察音楽隊
(The Band's Visit)

イスラエル

予告編→
手違いで目的地と別の場所に着いた音楽隊。小さな街の住人達と音楽隊のメンバーの一夜の交流を描いた人間ドラマ。
2006
(第19回)
OSS 117 私を愛したカフェオーレ

フランス

予告編→
フランスで1950年代~60年代に製作されて人気を博した「OSS」シリーズを復活させたスパイ・アクション・コメディ。
2005
(第18回)
雪に願うこと

日本
北海道特有の障害物レース“ばんえい競馬”を舞台に、人生に挫折した青年の再生と家族のきずなを描いた人間ドラマ。
2004
(第17回)
ウィスキー
(Whisky)

ウルグアイ

予告編(日本語字幕なし)→
さびれた街で生きる人々の哀しみをユーモアをまじえつつ描いた作品。
2003
(第16回)
暖~ヌアン

中国
10年ぶりに故郷を訪れた青年、かつての恋人と再開するが、彼女はすでに結婚し子どもがいた。2人の胸の複雑な思いを見事に描写する。
2002
(第15回)
ブロークン・ウィング
(Broken wings)

イスラエル

予告編→
父親を亡くした家族が、様々な確執を乗り越え結ばれていく感動作。
2001
(第14回)
スローガン

アルバニア
1970年代後半、共産主義体制のアルバニアを舞台にしたドラマ。小学校教師の目を通して共産主義の非人間性を描く。
2000
(第13回)
アモーレス・ぺロス
(Amores Perros)

メキシコ

予告編(日本語字幕なし)→
名匠アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの初めての監督作品。 イニャリトゥ監督は、後に「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」「レヴェナント: 蘇えりし者」で、2年連続でアカデミー賞の監督賞を受賞することになる。 メキシコのとある街を舞台に、許されぬ愛に翻弄され苦悩する人々の姿をオムニバス形式で描いた。

2020年代2010年代2000年代1990年代1980年代歴史

1990年代のグランプリ
作品名 内容
1999
(第12回)
最愛の夏
(Darkness and Light)

台湾

1998
(第11回)
オープン・ユア・アイズ
(Abre los ojos)

スペイン

予告編→
1997
(第10回)
ビヨンド・サイレンス
(Beyond Silence)

ドイツ

予告編(日本語字幕なし)→
パーフェクト サークル
(The Perfect Circle)

ボスニア・ヘルツェゴビナ

1996
(第9回)
コーリャ 愛のプラハ
(Kolya)

チェコ

予告編(日本語字幕なし)→
1995
(第8回)
該当作品なし
1994
(第7回)
息子の告発
(The Day the Sun Turned Cold)

中国

1993
(第6回)
青い凧
(The Blue Kite)

中国

予告編→
1992
(第5回)
ホワイト・バッジ
(White Badge)

韓国

1991
(第4回)
希望の街
(City of Hope)

アメリカ

予告編(日本語字幕なし)→

2020年代2010年代2000年代1990年代1980年代歴史

1980年代のグランプリ
作品名 内容
1989
(第3回)
ホワイト・ローズ

ユーゴスラビア

予告編(日本語字幕なし)→
1987
(第2回)
古井戸

中国
1985
(第1回)
台風クラブ

日本

相米(そうまい)慎二監督

予告編→
東京からは遠い、山あいの町(ロケ地は長野の佐久)。台風が来たのに下校し遅れ、学校から帰れなくなった中学3年生たち。一方、家出して上京し、大雨の原宿に降り立った同級生。無気力な教師……。台風を媒介にしてこうした人物たちの葛藤や好奇の行動が交錯し、奔放な表現が繰り広げられる。

相米(そうまい)慎二監督は盛岡生まれ、団塊世代に当たる。2001年に病没、53歳の若さだった。カットせずにカメラを回し続ける「長回し」が特色で、大胆、斬新な演出で引きつけた。演技指導は厳しかったといわれる。監督作品13本。1981年の「セーラー服と機関銃」は大ヒットした。

映画評論家の山根貞男氏は、キネマ旬報社が発刊した『日本映画・テレビ監督全集』において、「相米慎二の映画は祭りである」と論じた。そのうえで、「そうした青春の祝祭としての映画は(略)『台風クラブ』で頂点を窮めた」と評価した。

1985年8月公開。脚本=加藤祐司。監督=相米慎二。出演=工藤夕貴、三上祐一、大西結花、三浦友和ほか。キネマ旬報ベスト・テン4位。毎日映画コンクールで日本映画優秀賞、脚本賞を受賞。

2020年代2010年代2000年代1990年代1980年代歴史

東京国際映画祭の歴史

東京国際映画祭の歴史を紹介します。日本で初めての本格的な国際映画祭としてスタート。バブル時代に活況を呈しましたが、最近は地味な存在になっています。

1985年に第1回目~大賞の賞金2億7000万円

東京国際映画祭は、日本がバブル経済へと突入する少し前の1985年に始まりました。 日本では初めての本格的な国際的な映画イベントでした。 第1回目は、東京・渋谷かいわいの映画館などで行われました。 新進監督の作品を含む40カ国の137本の映画が上映されました。 当時の映画祭事務局の発表によると、入場者総数は10万5000余人にのぼりました。

大賞は、相米慎二監督の「台風クラブ」

注目の新進監督コンクール「ヤングシネマ85」の大賞(ヤングシネマ大賞)には、相米慎二監督(そうまい・しんじ、当時37歳)の「台風クラブ」が選ばれました。

総額で12億円の賞金

大賞の賞金は次回映画の製作援助資金として150万ドル。当時の為替レートでいえば約2億7000万円にのぼる巨額のお金です。現在のグランプリの賞金が、5万ドルなので、150万ドルといえばその30倍です。 さすが、バブル前夜の日本ですね。賞金は、他の賞も含めると12億円で、一般企業から集めたそうです。

後に「あ、春」などの名作生む

相米監督は盛岡市出身。中央大中退後、日活を経てフリー。 「セーラー服と機関銃」「魚影の群れ」などで知られています。 中学生たちの不安定な気分を描いた「台風クラブ」は5本目の監督作品でした。 相米監督は、その後も目覚ましい活躍を続け、1998年の「あ、春」は、ベルリン国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞。キネマ旬報ベストテンの第1位に選出されました。 しかし、肺がんを患い、2001年に53歳という若さで亡くなりました。

監督賞も1億円

第1回目の最優秀監督賞は、「止った時間」のペーテル・ゴタール監督(ハンガリー)が受賞しました。こちらにも、製作費の援助として50万ドル(1億2400万円)の賞金が授与されました。 ゴタール監督は、もらった賞金で「アメリカのように」を製作しました。 また、小津記念賞に「At」のアリ・オズゲントルク監督(トルコ)が選ばれました。こちらは賞金25万ドル(6000万円)。 このほか、「ジャックと11月」のフランソワ・ブービエ、ジャン・ボードリー両監督(カナダ)、「蜘蛛(くも)女のキス」のヘクター・バベンコ監督(ブラジル)が、審査員特別功労賞を受賞しました。

2回目から「グランプリ」創設

2回目の東京国際映画祭は、第1回の2年後となる1987年に開催されました。最初は隔年での開催だったのですね。2回目から、最高賞として「グランプリ」が創設されました。 第1回目の最高賞は若い世代の監督作品を対象にした「ヤングシネマ大賞」でしたが、それに加えて、すべての作品を対象にするグランプリ部門ができたことで、わりとメジャーな作品も参加するようになりました。アカデミー賞の作品賞にノミネートされた「戦場の小さな天使たち」も出品されました。また、第1回のヤングシネマ大賞を受賞した相米慎二監督の「光る女」も、グランプリ部門に出品しました。

審査員にアラン・パーカーら

審査メンバーは、審査委員長に米俳優界の重鎮、グレゴリー・ペックが就任。審査員は、アラン・パーカー、ニコライ・T・シゾフ、ムリナル・セン、クロード・ベリ、スタンリー・ドーネン監督、俳優のダイアン・キャノン、篠田正浩監督、映画評論家の登川直樹氏の8人でした。実行委員長は岡田茂東映社長でした。

会場は渋谷

会場は、NHKホール、渋谷パンテオンなど東京・渋谷地区が中心でした。10会場で162本が上映され、約10万3000人の観客を集めました。海外からも映画関係者652人が参加しました。なお、1回目は6月ですが、2回目は9月下旬から10月上旬にかけて開催されました。

グランプリは中国映画「古井戸」

グランプリは中国映画「古井戸」(呉天明監督)が受賞しました。山西省の山奥の水のない寒村の井戸掘りの物語。個人と社会のあり方を新しい視点でとらえました。 ラブシーンも中国映画史上初めてといわれるほど濃厚で話題になりました。

受賞作、受賞者の一覧

受賞作、受賞者は次の通り。

【インターナショナル・コンペティション部門】

・東京グランプリ・都知事賞=「古井戸」(中国)
・審査員特別賞:「シルビーの帰郷」(カナダ)
・最優秀監督賞:ラナ・ゴゴベリーゼ=ソ連「転回」
・最優秀男優賞:チャン・イーモウ(張芸謀)=中国「古井戸」
・最優秀女優賞:レイチェル・ウォード=オーストラリア「普通の女」
・最優秀芸術貢献賞:ジョン・ブアマン=英国「戦場の小さな天使たち」
・最優秀脚本賞:ビル・フォーサイス=「シルビーの帰郷」

【ヤングシネマ部門】

・さくらゴールド・都知事賞:「キッチン・トト」=イギリス
・さくらシルバー:「ホテル・ロレイン」=アメリカ
・国際映画批評家賞(国際批評家連盟が各国際映画祭で選ぶ賞):韓国の「旅人(なぐね)は休まない」(李長鎬監督)
・国際映画批評家特別賞(同):中国の「古井戸」